皐月 味の歳時記 馳走「菊水庵」

 皐月 味の歳時記  馳走「菊水庵」
皐月 味の歳時記 馳走「菊水庵」

 

皐月   やはり稲作農耕民族として、神との繋がりが暦の名に反映されます。

立夏  二十四節気   この季節をすぎると、緑生い茂り 山や里でも花が咲き始めます。

 

山里の川も水温み、川岸の緑も鮮やかに濃くなり この川の流れも、根雪の残雪が

溶けて 流れ込み 流れも早くなってきます。

 

 

        「五月雨を集めて はやし 最上川」         

    五月雨と 山裾の雪解け水が 初夏の始まりとも言えるでしょう。

 

この雪解けの水は早苗月と呼ばれるように 水路を流れ 乾いた田にたっぷりと

水を与え、潤いある水田へと姿を変えていくのです

 

周りの水路や土手では、伸びた蕨や野蒜、甘草などがぐんぐんと増えて 急かされるように摘んだ思い出があります。 

あれは、私の教え子の一人で 四年程頑張ってくれた男の子ですが 彼の田舎に招待された時のことです。

 

東北の静かな山あいの町でした。

丁度田植えの時で 水路のドブさらいや田植えを手伝いました。 田植えの合間に 山菜を採ったり 近くの小川や滝、畑など散策しました。

 

見上げると、青い空と ふんわりと流れる雲  初夏の颯爽とした爽やかさで、頬に受ける風もこの季節独特の物がありますね。

 

また、散策中のその森の木々は、五月雨に濡れた時など その緑はクリスタルゼリーをまとったかのような瑠璃色で まさに  「目に青葉 山ホトトギス 初鰹」  でしょうか。

 

さて、その彼はと言うと 私の元で修業した後、実家の近い温泉宿に煮方として行かせました

 

そこは、私の兄弟子が親方でいるところで 地元の米や 岩魚 そして山菜 や無農薬野菜などを売りにすることで評判のこじんまりとした宿でした

 

彼は病気がちの父親に変わり 田植えをするために休みをもらうというのと 丁度料理師範会のミーティングがあるというので、私もそれを利用して出かけました。

 

彼は、その頃地元の可愛い年下のお嬢さんと結婚して 奥さんのお腹には お子さんも身ごもっていました。

 

田植えを手伝ったその日の夜は、近所の方や、お寺のお和尚さんと共に お食事と

おいしい自家製のどぶろくで楽しい一夜を過ごしました   

その時の料理ですが、私が目を見張ったのは、岩魚の味噌たたきです。

勿論、炭火焼もあったのですが、これは、私にも初めての味でした。

お刺身にした岩魚に摘んできた野蒜と麹味噌で叩きにするのですが、それはそれは 斬新で有りながら、懐かしさと新鮮さが共存する料理で 感動してしまいました。

 

元々、昔から伝わる郷土料理で その味わいは深く、静かな渓流の命 その荒々しい自然の味を引き出すには、やはり、土を割り眼を芽を出した野蒜でなければ負けてしまうのでしょう。

 

その土地に伝わる郷土料理 見事なそして理に叶った食文化だと改めて感心してしまいました。

 

そして山菜を、お和尚さんはどぶろくで赤らめた顔をしながら、

 

(何もない所から、生まれるのが 文化  

あれこれと 金ばかり使わず、足元の宝を見直すこと  

文化とは、人間の生きる知恵だと話していたことを思い出します。)

 

今でも、良い岩魚があるときは、作りたくなる私のレシピの一つです。

 

糧である前に 文化であり 文化は生きる糧である

 

                                                                    宮野徹山

 

 

清流の命  渓流の命 岩魚   海では、貝類が豊富です。  

名残の筍と鮎の混ぜご飯もお酒の後は、また風流です。

皆様のお越しをお待ちしています。

 

           摘み草 一味   「馳走 菊水庵」 

                                                ようこそ ようこそ